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惜しまれながらの閉店 理由は語られず…

玉川上水沿いの五日市街道にあるクラシックな喫茶店『くすの樹』

突然の閉店の貼り紙に
近隣の住民だけではなく、遠くからわざわざ、最後の”くすの樹”の雰囲気を味わいにたくさんの方が来ている。

毎日の店の前の大行列に、くすの樹の存在を知らなかった通りすがりののドライバーも、みな、何ごとかと、車からくすの樹の方を覗き込む。

また、それが、さらなる行列を呼んでいるようにも見えた。

創業38年。
大きな敷地の中に、英国風の木造の建物が印象的なコーヒー専門店。世界各国のコーヒー豆を厳選して提供している喫茶店。

店内は、天井が高く、”新聞を広げてゆっくり時間を楽しむ”のがとても似合う心地よい空間。

そんな楽しみ方とは別に、私は仕事で、何度か行ったことがあった。
今回閉店にともない、どうしても行ってみたいという主人。
土曜の朝に付き合った。

開店15分前の8時45分に到着。12番目に名前を書くことができた。
店内は、1階、2階に分かれており、50席ほどあった印象なので
オープンとともに入れると確信していた。

しかし、開店後呼ばれたのは、5組ほどの15名。
その後、数組ずつ分けて2回目くらいに、名前を呼ばれ1時間かけての入店だった。

開店したら、すぐに入れると思っていたので1時間は長く感じ
若干『なんで?!』と気持ちがイラッと。
吹き抜けで下階が見える2階に通され、周りを見渡すと、
半分以上が空いている。
スタッフが丁寧にゆっくりと『お待たせしてすみません』と対応。
モーニングとコーヒーを頼み、黙ってその場の雰囲気を味わい観察した。
お料理は思いの外すぐにでてき、追加注文にも、スタッフの焦る雰囲気は全くなく、店内落ち着いていて居心地が良かった。
なんなんだろう?この雰囲気…

もし、満席状態で席数分お客をいっぺんに入れてたら…
お客は、しばしば待つ我慢を強いられ、
スタッフは、あちらこちらから『すみません』と声をかけられて、『少々お待ちください』『お待たせしました』の連呼で、バタバタと接客している。そんな雰囲気を想像した。

やっと入店したお客は、急がされることなく、雑誌を読んだり、話したり、自分の時間を存分に楽しみ、満足しているように見えた。
そして、私たちも、すぐに入れなかった不満など忘れ、また、たくさんの方がまだ待っていることも忘れるくらい”くすの樹”を味わうことができ、外とは別世界のように感じた。

これが究極のサービスなのかもしれない。
『くすの樹らしさ』

余裕ある接客と、料理の提供のタイミング。
ゆっくりしていってほしいという喫茶店ならではの美意識。

『あとどのくらいで入店できる?』の問いに…
『わたくしどもは喫茶店なので、お客様のお帰りの時間はわからないんです…』と答える女性の声が蘇り、納得できた。

明日が閉店日
スタッフも、思い残すことのないサービス、”くすの樹らしさ”を噛み締めながら働かれているのかなー。と思ったら、より感慨深かった。

裏側にある大駐車場には樹齢200年余りの楠の巨木の枝葉がを覆い隠すようにそびえ立っている。
一見の価値あり。

別世界の空間をありがとうございました。

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